動画制作の背景
この動画は、観光プロモーション映像における撮影・演出クオリティをお伝えすることを目的に企画した、自主制作のサンプル映像です。実在の観光地を舞台に、ロケーション選定から構成設計、撮影体制の組み立てまでを一貫して行い、観光案件を想定した形で制作しました。
舞台として選んだのは、自然・火山・湖・歴史文化が一つのエリアに凝縮された箱根町です。限られた尺の中で、壮大な景色と静かな時間の流れ、その両方を描くことで、観光地の魅力をどう切り取り、どう組み立てるかを示せるPR動画を目指しました。
構成のポイント
箱根が持つ「心身を癒やし、再生へと導く力」を国内外の旅行者へ届けたいという思いから、本プロモーション映像を企画しました。物語は、電車のやわらかな揺れと規則正しい走行音から始まります。都会の喧騒を離れた旅の入口として、少し疲れた表情の外国人女性を主人公に据えました。彼女が箱根の自然や文化に触れ、五感が少しずつ満たされていく過程を通して、内面の変化を描いています。
大涌谷では立ち上る噴煙と大地の匂いに包まれ、箱根美術館「真和亭」では、抹茶のほろ苦さと和菓子のやさしい甘さに出会います。初めての体験に戸惑いながらも、やがて驚きと喜びが重なり、自然と笑顔がこぼれていく流れを大切にしました。仙石原のススキにそっと触れる仕草や、紅葉に染まる景色を見上げるまなざしなど、聴覚・嗅覚・味覚・触覚・視覚が一つずつ重なっていく構成としています。
風景の美しさを見せるだけでなく、訪れた人の心が整い、前向きな気持ちへと変わっていく様子を物語として組み立てることで、箱根が持つ「再生の力」を感じてもらえる映像を目指しました。
デザインのポイント
箱根の空気や静かな時間の流れがそのまま伝わるよう、等身大の女性のひとり旅をイメージしながらデザインを設計しました。タイトルには、まるで旅の記録を綴った手記のような書体を採用し、主人公の心の動きにそっと寄り添うトーンに整えています。映像そのものが主役となるよう、文字は主張しすぎないサイズ感と配置に抑えつつ、柔らかな印象のフォントを選ぶことで、全体の雰囲気と自然になじむ構成を心がけました。
キャプションの動きには、さりげないきらめきを加えています。光に包まれた風景や風に揺れるススキのカットと重なることで、訪れた場所ごとに心が弾む主人公の気持ちが伝わるよう工夫しました。控えめでありながら、感情の高まりを支える役割を担うデザインを意識しています。
また、アクセントには箱根の伝統工芸である寄木細工をモチーフにした幾何学模様を取り入れました。異なる色や木目が組み合わさって一つの美しさを形づくる寄木細工の特徴を、旅の中で出会うさまざまな風景や体験が重なり合う映像構成と重ね合わせています。土地ならではの質感をさりげなく織り込みながら、物語全体をやわらかく包み込むデザインに仕上げました。
撮影のポイント
箱根が持つ「再生の力」を映像で伝えるため、五感を通して外国人女性が少しずつ活力を取り戻していく物語を、撮影面でも表現できるようにしています。例えば、自然な表情の変化を逃さないよう、事前にロケハンを重ね、時間帯や導線を細かく設計。初めて口にする抹茶に思わず顔がほころぶ瞬間や、風を受けて目を閉じる静かなカットなど、その場でしか生まれない反応を大切に捉えています。
撮影にあたっては各施設のご協力をいただき、人の少ない落ち着いた環境を整えることができました。そのおかげで、スローモーションを効果的に用いながら、風や光の動きまで感じられる柔らかな映像表現を追求しています。さらに、ドローンによる空撮では芦ノ湖を進む海賊船を広がりのある構図で収め、箱根の雄大さを印象づけるカットも加えました。
仕上げではカラーグレーディングにも注力し、曇天で撮影したシーンを透明感のあるトーンへ整え、紅葉の色味も自然さを保ちながら引き立てています。入念な準備と現地の温かな協力、そして映像処理の工夫を重ねることで、箱根が持つ癒やしとエネルギーが伝わる一作となるよう取り組みました。
編集のポイント
編集では、デザイナーが設計したテロップデザインをもとに、モーション表現の構築を担当しました。まずは動きの方向性を探るため、複数のパターンを制作。スピード感のあるもの、ゆったりとしたもの、直線的な動きや柔らかなカーブを描く動きなどを比較しながら、ディレクター・デザイナーと細かくすり合わせを行い、映像全体のトーンに最もなじむ表現を選びました。
特にこだわったのは、寄木細工をモチーフにしたあしらい部分の動きです。パーツが一つずつ集まり、少しずつ形になっていくようなアニメーションにすることで、箱根らしい繊細さや丁寧さが伝わるよう設計しました。単なる装飾ではなく、土地の文化を感じさせる動きとして機能することを意識しています。
また、文字の出現や消失についても、映像の空気を壊さないことを最優先に考えました。急激に現れるのではなく、やわらかく浮かび上がり、ブラーを加えながらふわっと溶けるように消えていく演出を採用。風や光の動きと重なるようなタイミングで配置することで、カットの余韻を残しながら次のシーンへ自然につなげています。映像とデザインが調和し、物語の流れを支える、そんなテロップモーションになるように意識しました。
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