動画制作における編集作業は、見る側が受ける印象を大きく変えるための作業になります。撮影した動画自体には手を加えず、場面転換を行ったり、リズム感を付与したりするために活用されるのが「トランジション」です。トランジションを使いこなすことで、動画の印象を大きく変えられます。
そこで今回は、トランジションの概要や役割、よく使われるトランジション、活用事例について解説していきます。
トランジションとは?
トランジションは、動画編集を行う際に使用するエフェクトです。カットとカットのつなぎ目に使用されます。動画はいくつかのカットを組み合わせることで構成されているため、どうしてもつなぎ目ができてしまうものですが、そこを目立たせず動画を飽きさせないためにトランジションが活用されます。
トランジションを有効活用することで、幅広い演出をすることも可能です。カットの変わり目で印象を変えたい時、カット同士を違和感なくつなぎたい時などに効果を発揮します。そんなトランジションには様々な種類があるので、どのような印象の動画に仕上げたいかで取り入れるものが異なります。
動画制作では欠かせない要素となってくるため、理解を深めておくことは重要です。これから動画制作をしようと考えている方、動画制作を依頼したい方もトランジションを知っていると、どのような動画にしたいか明確にしやすくなるでしょう。
トランジションの種類12選
動画制作で使用されるトランジションにはいくつもの種類があります。続いては、数あるトランジションの中で、初心者が押さえておきたい基本的なものをピックアップしてご紹介します。
なお、トランジション以外の動画編集方法やテクニックについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
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ディゾルブ
ディゾルブ(dissolve)は日本語に直訳すると、「溶かす」という意味になります。動画編集では、動画と動画をつなぐ時に使われるテクニックです。
前後のカットを重ね合わせ、徐々に後のカットへと移行していきます。前後のカットが溶け合うようにシーンの転換が行われるため、ディゾルブと呼ばれているのです。
ディゾルブは主に時間経過の表現や回想シーンなどに用いるケースが多いです。優しくシーンが移り変わっていくので、テレビや映画、ウェディングなど、様々なジャンルで活用されています。
ホワイトアウト・ブラックアウト
ホワイトアウトとブラックアウトも、多くの場面で用いられているトランジションです。画面を徐々に白くして次の場面に移るのがホワイトアウト、画面が徐々に暗転して次の場面に移るのがブラックアウトです。
エピソードが変わったり、シーンの切り替えを明確にしたりする場合に用いられます。メリハリのある動画に仕上がるという点が、ホワイトアウト・ブラックアウトの大きな特徴です。
ホワイトイン・ブラックイン
ホワイトイン・ブラックインは、ホワイトアウト・ブラックアウトとは逆の演出となるトランジションです。ホワイトインは、画面全体が白い状態になっていて、映像が浮かび上がっていきます。ブラックインは、画面全体が暗い状態から映像が浮かび上がっていくという演出になります。
ホワイトインとホワイトアウト、ブラックインとブラックアウトはそれぞれセットで使われるケースも多いです。スムーズな画面切り替えをするには、徐々に映像を浮かび上がらせることがポイントとなります。
スライド・押し出し
スライドは、次のカットがスライドして前のカットに重なるように場面が切り替わるトランジションです。押し出しは、前のカットを次のカットが押し出すようにシーンが切り替わります。
映画やドラマでは見かけることが少ないですが、アニメやYouTubeにアップされている動画では目にする機会が多いです。場面の切り替わりがはっきりするので、場面転換でシーンがガラッと変わる際に有効な効果と言えます。短い時間で複数の場面を見せたい場合にも効果的です。
ワイプ
ワイプ(wipe)は日本語だと「拭き取る」という意味になるトランジションです。画面が拭き取られたようになってからカットが切り替わります。
まっすぐな1本線がさっと画面内を横切るような効果が印象的で、車のワイパーを想像するとイメージしやすいでしょう。上下に動くタイプや円を描きながら動くタイプなどもあります。ワイプを使うと懐かしい印象になるため、回想シーンで使われることが多いです。
テレビ番組でメイン画面の隅に小窓を表示させ、異なる映像を同時に流す「ワイプ
とは別物なので混同しないように注意しましょう。
回転
回転はその名のとおり、ぐるりと回転しながらシーンが切り替わるトランジションで、「スピン
と呼ばれることもあります。ダイナミックな動きが特徴で、短時間の動画で活用すると勢いを感じやすくなります。
SNS広告で用いられるケースも多いです。変化を付けたい時に効果的なので、ミュージックビデオで使われることもあります。スピードの緩急をつければおしゃれな印象になるのも、このトランジションならではの特徴です。
ズーム
ズームもトランジションの一種です。カメラがズームアップした後、ズームアウトしながら次の場面に切り替わります。
ズームアップしながらカットをつなげることも可能です。ズームアップの最中に画面を切り替えていくと、躍動感のある映像に仕上がります。
躍動感のある演出を取り入れたいのであれば、ズームはおすすめのトランジションです。映像自体の動きを増やすためにも効果的です。
アイリス
アイリスは、カメラの絞りのことを指します。前のカットの画面中央から円や正方形の図形が広がりながら次のカットへ移行していくトランジションです。古い映画やドラマで多く活用されている手法なので、目にしたことがある人も多いでしょう。
アニメのエンディングで用いられていたこともあり、以前までは様々な映像で用いられていました。最近はあまり見かけなくなりましたが、全く使われていないわけではありません。
リップル
リップルは、小石を水の中に落とした時にできる波紋を模したトランジションです。動画編集ソフトによりますが、画面の上から下、左から右、などのように移動の仕方を選択できます。水面のような演出になるので、おしゃれな雰囲気の動画におすすめです。
まるでワイプのような役割を果たすことも可能です。そのため、幅広い場面で活用できる使い勝手の良いトランジションだと言えます。場面に応じてどれが適しているのか、いくつか試してみるのも良いでしょう。
グリッチ
グリッチは、人気のあるトランジションです。扱いが難しいことから以前は使われる場面が限られていましたが、最近は使いやすくなったこともあって多くの場面で活用されるようになってきました。SFや近未来を舞台にした映画などで使われるケースが特に多いです。
プリセットも多く用意されていて、自分だけの理想のグリッチを作ることも可能です。動画編集ソフトを使って簡単にグリッチを付与することができるため、試してみてください。
幾何学模様
幾何学模様は、その名のとおり幾何学的な模様のトランジションです。このトランジションを使うと、動画がおしゃれな印象に仕上がります。そのため、カフェや雑貨店などを紹介するYouTube動画などで取り入れられるケースも多く見られます。
また、幾何学模様のトランジションには見ている人を飽きさせないという効果も期待できるでしょう。ただし、主張は強めなので動画のつなぎ目をなくしたり、テンポの良い動画を作ったりしたい場合には適さない可能性があります。
蒸発
蒸発は、煙のように消えていく演出ができるトランジションです。インクを水面に落とすとまるで煙のように広がり薄まっていきますが、そのような演出を加えるのが蒸発です。
演出方法は多岐にわたり、中央から周りに広がっていったり、真ん中から上下に広がっていたりと、様々なテイストに仕上げられます。動画のイメージに合わせてどのようにこのトランジションを取り入れるのが効果的なのか検討してみてください。
ここまでよく使用されるトランジションをご紹介しましたが、動画制作ツール・ソフトによって使えるものが若干異なります。以下の記事では無料で使えるWebブラウザ版のおすすめ動画制作ツールを紹介しているので、こちらもぜひチェックしてみてください。
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トランジションのメリット
トランジションは動画編集に欠かせない要素の1つですが、実際に活用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここからは、トランジションのメリットをご紹介します。
最後まで見てもらいやすくなる
トランジションは、「動画の内容を理解してもらいたいけれど、映像自体は単調なので、飽きられてしまうかも」といった時に役立ちます。トランジションを活用すれば、映像自体はそのままに、動画に動きを付けられるため、最後まで飽きずに見てもらいやすくなるのです。
シーンの切り替わりが自然になる
複数の映像をつなげて1つの動画を制作する場合、エフェクトなしでつないでしまうと、視聴者の混乱を招くだけでなく、不信感を抱かれてしまう可能性があります。トランジションを使うとシーンの切り替わりが自然になり、ストレスなく視聴してもらえます。
トランジションのデメリット
次に、トランジションのデメリットを見ていきましょう。
多用すると動画の内容が頭に入りづらくなる
トランジションは視聴者を飽きさせない魅力がある反面、多用すると動画の内容が頭に入りづらくなります。あくまでも動画の内容を理解してもらうことが大前提となるため、適切なタイミングで活用することが求められます。
動作が重くなる
トランジションを多用すると、編集時にPCやスマホが重くなる他、動画自体のデータ容量も大きくなってしまいます。動画編集や投稿がスムーズにいかなくなる原因になるため、活用頻度に気を付ける必要があるでしょう。
トランジションをつけるおすすめのソフト3選
トランジションを使いこなすことで、飽きのこない上質な動画が制作できるとご紹介しました。トランジションを活用するためには、トランジションが使えるソフトを選定する必要があります。ここでは、おすすめのソフトを3つご紹介します。
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PowerDirector
PowerDirector(パワーディレクター)は、2億人以上が使用する世界中で人気のある動画編集ソフトの1つとして知られています。動画編集ソフトは機能が多く、使いたい機能を見つけられないことも少なくありません。一方で、PowerDirectorは、日本の企業にも使われている本格的なソフトで、初心者でも扱いやすいUI設計となっているのが特徴です。さらに、日本語でのサポート、YouTubeでの使い方講座もあるため、理想的な動画制作が叶います。
PowerDirectorのトランジションはデフォルトで200種類以上が使用可能な上、おしゃれなものが多く、使いやすいはずです。また、アレンジを加えられるトランジションデザイナー機能が搭載されているため、より個性的なトランジションを作成することもできます。
オリジナリティのあるトランジションで動画をつなげたいという場合は、PowerDirectorを使うのがおすすめです。PowerDirectorは無料体験版を配布しているため、気になる方はそちらから試してみましょう。
Premiere Elements
Premiere Elementsは、IllustratorやPhotoshopをはじめとする高品質なツールを生み出す「Adobe」が開発した動画編集ソフトです。AdobeはPremiere Proという動画編集ソフトもリリースしていますが、こちらはプロ向けのソフトとなるため、初心者には扱いづらいと言えます。Premiere Elementsは、Adobe製品ならではの質の高さがあるにも関わらず、初心者でも高クオリティの動画を制作できるソフトとなっているのでおすすめです。
トランジションは、100種類以上(Mac OS版は53種類)用意されており、動画に合ったものを見つけやすいです。トランジションの挿入はもちろん、削除も簡単にできるため、様子を見ながら採用するトランジションを決められるのもメリットと言えます。
トランジション以外にも、素材とテーマを選ぶだけで動画制作ができる自動編集オプション、操作手順が提示されるステップバイステップガイドなど、初心者でもスムーズに動画を制作できるという魅力があるのも特徴です。注意点は、動画編集ソフトの中でも比較的高価であることです。
AviUtl
AviUtlは完全無料の動画編集ソフトです。自由度の高いソフトであるため、無料でありながら、プロレベルの動画を実現することも不可能ではありません。トランジション機能は、「シーンチェンジ」という名目で搭載されており、32種類のトランジションから選べるようになっています。無料で使えるということでその他のソフトよりも種類が少なくなりますが、トランジションの効果を実感してみたい、動画編集の流れを体験してみたいという場合には大活躍するでしょう。
ただし、導入するのに時間がかかったり、編集操作の難易度がかなり高かったりするため、使い勝手が悪いと感じる方もいるかもしれません。また、フリーソフトと連携させる、プラグインを導入するといった作業も多くなることから、PCの知識が不可欠となります。初心者向けというよりは、編集ソフトにかかる費用を抑えたい、完全無料にこだわりたいという方向けのソフトであると言えます。
トランジションの使い方
ここからは、おすすめのソフトの1番目にご紹介したPowerDirectorの使用を仮定して、トランジションの使い方を解説します。一般的な動画編集ソフトであれば、トランジション挿入の手順はほとんど変わりません。
1. PowerDirectorを起動する
まずは、動画編集に使うソフトを起動します。今回はPowerDirectorを起動し、作成したい動画の縦横比を選択しましょう。編集モードは、一般的な動画編集に使用される「フルモード」を選択します。
2.動画を読み込み、編集をする
「ここに動画、画像、音声をクリック/ドロップします」と書かれているところに、動画をドラッグ & ドロップし、読み込みます。カットやトリミングで不要なシーンのカット、BGMの挿入など、編集を行います。
3.トランジションルームをクリックする
ある程度編集ができたら、画面左上にあるトランジションルームをクリックします。
一覧からその動画に適切なトランジションを見つけましょう。適用したいトランジションをシーンが切り替わる箇所にドロップしてください。
4.トランジションの長さを調整する
効果的にトランジションを使うには、トランジションの長さにも注意する必要があります。ドロップしたトランジションをクリックした後、タイムラインの右上部にある「選択したクリップの長さを調整」を選び、長さを調整しましょう。
オーディオにもトランジションを使う?
結論から言えば、オーディオに対してもトランジションは欠かせません。ここまで、映像にトランジションを使う理由や方法をご紹介してきました。しかし、シーンが切り替わるタイミングでBGMの変更も必要になるケースは多いです。
映像と同様、BGMや音声が突然切り替わってしまうと、視聴者の混乱を招いたり、違和感を与えてしまったりします。そのため、オーディオ用のトランジションを活用するようにしましょう。
とはいえ、オーディオを違和感なくつなぐ方法は、トランジションだけではありません。しかし、初心者にとって難易度が高い操作となるため、動画編集に慣れるまではトランジションを活用するのがおすすめです。先ほどトランジションの使い方を解説したPowerDirectorにも、オーディオ用のトランジションが用意されています。
トランジションを使用する際の注意点
トランジションを使用する際は、適切なタイミングと使用頻度を意識することが欠かせないとご紹介しました。しかし、注意点はそれだけではありません。
トランジションはソフトによって様々な種類が用意されていますが、どれを使ってもよいというわけではありません。動画のイメージとは異なるトランジションを使用してしまうと、統一感がなく、滅茶苦茶な印象を与えてしまう可能性があるからです。トランジションを使用する際は、映像や動画の内容とマッチしたものを選ぶようにしましょう。
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まとめ
トランジションは、動画制作において重要な役割を担います。動画編集ソフトの中には無料で付与できるものもありますが、効果を最大限発揮するためには知識が必要になります。より効果的な演出を動画に付与させたい場合は、動画制作・映像制作のプロに依頼するのがおすすめです。
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