Video大阪・関西万博等出展用ＰＲ　大阪府富田林市様

動画制作の背景

大阪府富田林市様は、歴史的な町並みが残る「富田林寺内町」を中心に、地域の魅力を国内外へ発信する取り組みを進めています。今回制作された動画は、2025年の大阪・関西万博をはじめ、各地の観光・文化イベントやウェブ媒体で使用されるPR映像として企画されました。

動画の内容

この動画は、富田林寺内町という町の“時間の流れ”そのものをテーマに据えたPR映像です。観光地としての情報を羅列するのではなく、町が持つ「静けさ」「ぬくもり」「継承」という空気を映像体験として感じてもらうことを目的としています。
全体を通して、映像は“語る”のではなく“感じさせる”トーンで構成されており、派手な演出や説明を排除して、光・音・間（ま）の美しさで町の魅力を伝えています。結果として、富田林寺内町が持つ“時を超えて心を落ち着かせる場所”という本質を、静かな余韻とともに体験できる映像に仕上がっています。

構成のポイント

この動画の構成では、「富田林寺内町という町そのものを語らずに語る」ことを意識しました。観光PRでありながら、説明や案内の言葉に頼るのではなく、映像そのものの流れと余白の美しさで町の魅力を伝えることを目的としています。
町の歴史や背景をストーリーとして描くのではなく、ひとりの旅人が町を歩き、過去と現在の気配を感じ取るような“体験”として構成しました。モノクロからカラーへの変化を軸に、時間の経過とともに重なり合う記憶や暮らしのぬくもりを表現しています。映像のトーンは静かで、語りすぎない。その分、光の差し方や風の音、足音といった“空気の要素”を丁寧に拾うことで、町の呼吸のようなものを感じてもらえる構成にしています。
特に意識したのは、「古さ」と「新しさ」を一枚の風景の中で自然に共存させることです。古い町並みの美しさを残しながら、そこに今を生きる人の気配や現代的な営みを重ねていくことで、“守りながら変わり続ける町”という富田林寺内町の本質を浮かび上がらせています。たとえば、町家を改装したカフェや宿を映し出すことで、歴史と日常が調和している姿を自然に伝えています。
また、ナレーションや音楽もあくまで控えめに、映像の中にある余白を壊さないように設計しました。言葉よりも映像が語り、観る人自身が「この町を歩いてみたい」と感じるような余韻を残すことを狙っています。富田林寺内町の静けさや温かさを、そのまま映像の呼吸として感じてもらえるように──。その“静かな体験”こそが、この動画の構成で最も大切にしたポイントです。

デザインのポイント

デザイン面では、富田林寺内町という町が持つ「時間の流れ」と「穏やかな空気感」を損なわないことを最優先に考えました。映像の世界観そのものが“町の魅力”になるよう、グラフィックやテロップの存在を必要最小限にとどめ、映像と調和するトーンで設計しています。
全体を通して、富田林寺内町の持つ“凛とした静けさ”と“人のぬくもり”を共存させることを目指しました。デザインが主張するのではなく、映像の一部として寄り添い、町そのものの美しさを引き立てる──そんな世界観を大切にしています。

撮影のポイント

撮影では、富田林寺内町という場所が持つ“静かな力”をどう映像に閉じ込めるかを意識しました。観光地としてにぎやかに見せるのではなく、町が何百年もかけて育んできた空気や光の移ろいを、ゆっくりと感じられるように撮ることを大切にしています。
この町の魅力は、目に見える建物の美しさだけではなく、そこに漂う時間の重なりや、静けさの中にある温かさにあると感じました。そのため、カメラはあえて派手に動かさず、歩く人の目線に合わせてゆるやかに流れるようなカットを中心に構成しました。手持ちとスライダーを使い分けながら、風が抜ける瞬間や光が差し込む角度など、偶然が生む表情を丁寧に捉えています。
また、映像全体のトーンを決めるうえで、光のコントロールには特にこだわりました。朝や夕方の柔らかい光を積極的に使い、町並みの木格子や瓦屋根に陰影を落とすことで、寺内町の持つ「時間の深さ」を表現しています。モノクロのパートでは、わずかな光の反射や質感を強調し、まるで昔の記憶を覗き込むような雰囲気を意識しました。
被写体となる女性の動きも、演出しすぎず自然体で撮ることを心がけました。彼女がこの町を歩きながら感じる“安らぎ”や“懐かしさ”を、目線や仕草を通して描き出すことで、観る人にも「この場所を歩いてみたい」と思ってもらえるような映像にしたいと考えました。

編集のポイント

編集では、富田林寺内町という町が持つ“静かな美しさ”と“日本らしい情緒”を、映像のテンポと空気感で伝えることを意識しました。特にこの作品は、海外からの観光客にも日本の文化や地域の魅力を感じてもらうことを目的としているため、全体を通してゆったりとしたリズムと穏やかな映像の流れを大切にしています。
カットの切り替えはできる限り柔らかく、映像が呼吸するようなテンポで構成しました。人の動きや風の揺らぎ、光の変化など、わずかな時間の“間（ま）”を残すことで、見る人がこの町の静けさを体感できるようにしています。スロー表現を効果的に使い、歩く足音や衣の揺れといった細やかな動きを印象的に見せることで、映像全体に心地よい余韻を持たせました。
また、撮影素材の段階でわずかに生じていた揺れやズレは、スタビライズ処理を丁寧に行い、落ち着いた映像の印象を損なわないよう細心の注意を払いました。安定したフレームワークがあることで、町の持つ重厚感や静謐さがより引き立つようにしています。
素材の選定においては、尺の制約がある中で、地域の本質的な魅力とメッセージがしっかり伝わる映像を厳選しました。観光的な派手さよりも、町の静けさや温かさを象徴するようなカットを中心に採用し、ひとつひとつの画に意味を持たせるよう心がけています。
さらに、トランジションには光がふわりと差し込むようなライトリーク効果を取り入れました。シーンが切り替わる瞬間に、光がにじむように重なっていくことで、過去と現在、現実と記憶がゆるやかに溶け合う感覚を表現しています。この柔らかな光の演出が、映像全体のトーンを包み込み、温かみのある印象を生み出しています。
全体としては、情報を詰め込むのではなく、余白と光で語る編集を心がけました。見る人が自分のペースで町の時間を感じ、静かに心が動くような映像体験を目指しています。