古くから、コンテンツのフォーマットはメディアによって規定されると言われています。
メディアが新聞であれば、そこにのるコンテンツは「テキストと白黒の写真」に、メディアがラジオであれば、コンテンツは「音声」になります。
動画コンテンツも、そのコンテンツのフォーマットはメディアによって規定されます。従来の動画コンテンツのフォーマットは、テレビの画面サイズ、解像度、電波によって規定されていたと言えます。
実際に、テレビは白黒からカラーに代わり、アナログから地デジにかわったことで、映像も綺麗になりました。同様の大きな変化が、インターネットの世界においても起こっています。
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スマホの普及・4G回線の普及による縦型動画の流行
インターネットを利用するための端末は、従来はデスクトップパソコンやノートパソコンといったテレビと似たアスペクト比を持つディスプレイでした。そのため、Youtubeやニコニコ動画といった動画サイトでも、その多くは横に広い動画がそのほとんどでした。
しかし、昨今のスマホの普及、4G回線の普及により、屋外でもデータ通信量の多い動画コンテンツを手軽にスマホで楽しめる環境が整ってきたことで、スマホに最適化された動画コンテンツが流行の兆しを見せています。
従来の動画コンテンツをスマホの画面でできるだけ大きく見るためには、スマホの画面を横にする必要があります。
さらに、スマホユーザーの中には、日頃利用する際の利便性から、「画面の回転のロック」をかけているユーザーも多く、その場合は単にスマホを横に傾けるだけでは動画をディスプレイに対して最大化することができないため、従来のサイズの動画コンテンツの視聴は、若干不便なのです。
そこで、普段使っているスマホを立てた状態でも、画面いっぱいに動画を楽しむことができる縦型動画と言われるものが登場しているのです。
縦型動画の特徴
縦型動画の特徴としてまずあげられるのは、先に述べたようなモバイルフレンドリー性が高いという点です。
縦型動画は、普段XなどのSNSで流れてくるような、一般スマホユーザーが撮影した動画と同様のサイズであるため、画面を傾ける必要がありません。
そのため、従来の動画サイズのものよりも、気軽に楽しめるという利点があります。
現在では、スマホユーザーに向けた様々なコンテンツ(動画だけではなく、テキストや音楽、画像コンテンツなど)が配信されているため、ユーザーにとって、そのコンテンツを見てもらうための心理的障壁をどれだけ下げられるか?という観点は非常に重要視されているのです。
また、縦型動画は、「より身近に感じやすい」というのも、その特徴としてあげられるでしょう。
普段自分がとっている動画と同じアスペクト比であるため、まるでその動画コンテンツの世界が、すぐそばにあるかのように感じさせることができるのです。スマホを通じて、その動画の世界を触れることができるため、没入感の高さもメリットとしてあげられるでしょう。
縦型動画を効果的に使っているサービス
こうした縦型動画をサービスに取り入れ、効果的に利用しているサービスをご紹介しましょう。
①Snapchat(スナップチャット)
スナップチャットは、2011年9月にスタートした写真や動画を気軽に友人に送ることができるメッセージアプリです。
現在では、世界中で毎日1億人以上の人々に使われており、毎秒9,000枚の写真が共有され、スナップチャット上で再生される動画は1日80億回にも及ぶと言われています。
このSnapchatは、アメリカに住む14歳〜34歳のスマホユーザーの60%以上がスマホにダウンロードし、利用していると言われており、数年前より、アメリカの若者を中心に大流行しています。最近では、日本でも流行の兆しが見られています。
一見すると、LINEやインスタグラム、facebookと何が違うんだろうか?と思われると思います。スナップチャットが他と一線を画しているのは、そのコンセプトにあります。
それは、「半永久的な写真・動画を送ることができる」というものです。従来のメッセージアプリは、一度動画や写真を送ってしまえば、それを後から消すことは基本的にはできないものでした。
後から見返すと恥ずかしくなってしまうような動画や、笑えるけど下品な写真といったものを、若者世代が気軽に送りあえるサービスとして、ターゲットユーザーの心を掴んでいます。
このSnapchatでは、縦型動画広告の配信を行っており、Snapchatの縦型動画は、従来の横型動画広告と比較し、約9倍のCompletion Rate(完全視聴率)を記録しています。
スマホ世代の若者にとっては、ディスプレイに小さく表示される横型動画よりも、画面いっぱいに表示される縦型動画の方が、魅力的に写っているといえるでしょう。
このSnapchatでの縦型動画の成功は、企業にとって縦型動画の導入を促進する要因ともなっています。
Snapchatの売上高は、年々増加の一途を辿っており、これらの縦型動画広告はそれらを牽引する要因となっています。
②ツイキャス(TwitCasting)
ツイキャスは、正式名称はTwitCasting(ツイットキャスティング)という名前のサービスです。
ツイキャスは、モイ株式会社の運営するサービスで、iPhoneやAndroid端末、PCから簡単にライブ配信(生放送)を行うことのできるサービスです。
従来、日本における一般ユーザーのライブ配信は、ニコニコ動画やUstreamによって行われていました。
そんな中でツイキャスの人気が出た背景には、スマホ化とXとの連携のよさが貢献したと言われています。
まず、ニコニコ生放送やUstreemは、PCからの配信が前提となってできていたサービスです。
一方で、ツイキャスはスマホからの放送の利便性、手軽さを重視してサービスが作られています。このことから、スマホを持ち始めた中高生を中心に、爆発的にユーザーを獲得していったのです。
さらに、中高生にとってはアカウントを持つことが当たり前となったXによるログインが可能で、新たにアカウントを作る必要がなかったことも、流行を作り出した要因の一つと言われています。
スマホに最適化されたライブ配信サービスということで、ツイキャスも配信される動画のサイズは縦型動画となっています。
自分のスマホから、まるで友達の部屋を除くように、すきなキャス主(ライブ配信者のことをツイキャスではこのように呼称する)の放送を見ることができるのです。ツイキャスもまた、縦型動画をうまく利用したサービスであるといえるでしょう。
③Periscope(ペリスコープ)
Periscopeは、ツイッター社の運営するライブ配信アプリです。Periscopeは、元々はX社が、同社を1億ドルで買収したものです。
スマホからのライブ配信サービスの高い需要から、X社は買収を行ったものと考えられています。
海外を中心に利用者が拡大しており、海外版ツイキャスということもできるアプリです。
X社の提供するアプリということで、当然ながらXと同じアカウントを使い、利用することができます。
スマホからのライブ配信アプリとなるため、当然ながら配信される動画は、縦型動画となっています。
④C CHANNEL
C CHANNELは、2015年3月、LINEの代表取締役社長を退任した森川亮氏が新たに始めた動画配信プラットフォームです。
メイク、ヘアスタイル、ネイル、料理、家事といった、女性の関心が高いテーマを中心に、スマホで見れる「数十秒から1分程度」の縦型動画を中心にコンテンツが掲載されています。
こちらのアプリも、従来の動画配信プラットフォームとは異なり、PCからの閲覧ではなく、スマホからの閲覧を中心に設計されています。
2016年3月には、動画の再生数が月間1億回を突破したことも発表しています。
C CHANNELに掲載されている動画は、クリッパーと呼ばれるタレントやモデルが自身でアップロードする動画と、社内で制作される動画があります。
誰でもクリッパーになれるわけではなく、「読者モデル」のような形で、ある程度知名度や人気のある人がこのクリッパーに選ばれており、コンテンツの質が一定レベルになるように作られています。ただし、一般のユーザーも動画を投稿することができます。
C CHANNELでは、元々、C CHANNELを動画広告の配信プラットフォームでマネタイズを行う設計がされていると言われており、non-noやマキアージュ、楽天レシピなど、ファッション・メイク・メディアなど、様々な女性に人気ジャンルの公式アカウントが動画を配信しています。
Instagramでの広告配信と同様に、できるだけユーザーに馴染みのあるジャンルで、C CHANNELの文脈に則って動画広告を配信することで、視聴完了率も高く、広告効果も良いものとなっているようです。
⑤クラシル
kurashiru [クラシル]は、無料で料理レシピ動画をみることのできるレシピ動画アプリです。
1分で手軽に見れるレシピ動画となっており、短時間でレシピの要点をチェックしてすぐに自分でも作ることができます。
従来の写真とテキストのレシピに比べ、より作る手順や焼き色はどれくらいなのか?といった内容がわかりやすく、ユーザー獲得を拡大しています。
また、スマホでテキストを読むのがあまり好きではない、得意ではないという世代にとっては、能動的に検索するのではなく、XやInstagramのフィードを見るようにレシピ動画を次々と見て、「これいいかも!」と今晩のおかずを決めることにも役立っているようです。
こちらのクラシルも、スマホからの視聴を前提として作られているため、縦型動画となっています。
実際に料理をする際に、キッチンにスマホを置き、見ながら作るといった使われ方をしているため、縦型動画とは非常に相性が良いようです。
動画制作・映像制作におけるトレンド「縦型動画」の特徴と制作事例まとめ
いかがでしたでしょうか。動画制作におけるトレンド「縦型動画」の特徴と制作事例についてご紹介させていただきました。
動画制作において、スマホ化とそれに伴う縦型動画というトレンドは非常に大きなものです。
この動画フォーマットを有効に活用することができれば、ユーザーのスマホでの動画視聴体験をより良いものにすることも可能となっています。
スマホでの視聴を前提とする動画制作、動画広告の出稿を考える際には、ぜひこの「縦型動画」というフォーマットの検討をおすすめします。